2014年8月15日金曜日

医者に逃げるな

お参りする家の事情はさまざま。大家族もあれば、一人暮らしもあります。いつも寺子屋のためにジャガイモやタマネギを作ってくれているおじさんは母を見とった後、一人暮らしになりました。どこへ行くのも自転車で、よく近所で見かけていました。しかし最近めっきり会わなくなりました。

久しぶりにお邪魔すると「おぅ、おじゅっさんか」と歓迎してくれました。「最近どーしょん?(どうしてますか)」と切り出すと、「それが1年半ばかり、足が腫れてどもう調子が悪いんじゃ」と片足を引きずりながら麦茶を出してくれました。

おじさんは博学でインテリな人。自分で分析して自己治癒に専念していると説明してくれました。お勤めを終えて、やっぱり気になるので「やっぱ、病院に行ったほうがええで」と不機嫌になるのを覚悟して言いました。予想どおりの反応でしたが、私もお世話になった名医だからと付け加えると「おじゅっさんを診た先生ならエエかもな」と少しは前向きに考えると約束をしました。

その後、なぜ医者嫌いなのか問いました。「若い頃、横柄な医者とケンカしてなぁ、上からモノを言う医者が大嫌いになった。医者にかかるとすべて病気にされてしまうし」と答えてくれました。嫌いはともかく、医者にかかるとすべて病気……この言葉にはハッとしました。

高野山にいた頃、ちょっとした風邪で病院に行こうとしたら先輩に「医者グセがついたらなんでもかんでも病のせいにして逃げるようになるぞ」と釘を刺されたことがあります。元来「病」でじゅうぶんに意味は通じるのに、日本では「病気」と表します。病は気から……という諺もありますが、どちらに気を向けるかで全く正反対に転じます。医者に言われたことを鵜呑みにして不健康を装うのも、やせ我慢をして気合いで乗り越えて健康を演じるのもその人次第。ただ、なんでもかんでも病にして逃げてはいけない。すべては気持ちから始まる……このおじさんにはぜひ病院に行って欲しいと願いますが、ふとそんな先輩の言葉を思い出しました。

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