2014年7月5日土曜日

間違った道案内

古書店で見つけた、とある昔のエッセイ集から。

都会の地下街で道を訊ねているおばあさんを見かけました。訊かれたおじさんは身振り手振りで親切丁寧に教えてあげていました。私は横で微笑ましいなぁと見守っていました。

しかししばらくして、おばあさんの行きたい所とおじさんの教えている所はぜんぜん逆方向ではないかと気づきました。声をかけようとしたら、すでに2人は動き出していました。後から追いかけましたが、けっこうな早足でどんどん歩を進め、なかなか追いつきません。

おじさんは長い動く歩道(エスカレーターのような)におばあさんを乗せて見送っていました。すると、しばらくしておじさんは急に走り出し、動く歩道と併走しだしました。そうです、おじさんも間違いに気づいたのです。おばあさんは慌てて逆向きの歩道に乗ろうとしましたが、どうすることもできず、反対方向へ流されていきました。

人は他人を信じ助けを求めます。人は喜んでいただこうと他人に手を差し伸べます。その志は素晴らしくても、根本が間違っていれば到達する場所も人も異なります。また訊ねる人も見る目を養わなければ、希望とはまったく異なる方向へ進んでしまいます。人生においても同じことが言えると思います。

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